啄木日記メモ目次
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時間表目次
M41.0430
漱石「虞美人草」。
M41.0429
須田町で電車を待っているとき、梅川に声をかけられる。二人は上野の山に上った。女は頻りにセンチメンタルな事を云っては”奇妙ですねー。”と繰り返した。
金田一兄を訪ねた。
M41.0428
正金銀行の預金課長、小嶋君と話。詩が散文に圧倒されてゆく傾向と自然主義の問題であった。有明集が六百部しか売れぬと聞いた。二葉亭の作に文芸を玩弄する傾向の見えるのは、氏の年齢と性格によるので、今の文壇、氏の位頭の新らしい人はあるまいと評した。
新橋へ。新詩社へ。与謝野氏の古い着物に不釣り合いな電燈。此詩人は老いている。小説の話が出た。
(このあと千駄ヶ谷新詩社にしばらく泊まる)
M41.0427
午後六時上陸。
長野屋に投宿。与謝野氏に明日行くと打電して机に就く。
M41.0426
午前七時萩の浜港に投錨。しばし上陸。梅の花が盛りを少し過ぎて居た。桜は笑みそめた許り。
雪が消えた許りの、青草一つ無い国から、初夏の都に行く自分には、此萩の浜の五時間が今年の春であった。
M41.0425
飄泊の一年間、モ一度東京へ行って、自分の文学的運命を極度まで試験せねばならぬというのが其最後の結論であった。我を忘れむと酒に赴いた釧路の七旬の浅間しさ!満足というものは、所詮我自らの心に求むべきものだという悲しい覚醒は、創作的生活の外に自分のなすべき事が無いと覚悟せしめた。此覚悟を抱いて、自分は釧路を逃げ出した! そうだ、逃げ出した!
M41.0424
函館を出る。
自分が新たに築くべき創作的生活には希望がある。否、これ以外に自分の前途何事も無い!
犬コロの如く丸くなつて三等室に寝た!
M41.0423
明後日出帆の三河丸で上京と決す。
郁兄、岩崎君、吉野君とビール。
M41.0422
M41.0421
M41.0420
鈴木方の新居へ。
M41.0419
一家四人小樽から汽車で函館まで。
M41.0418
小樽日報休刊(廃刊)
M41.0417
M41.0416
M41.0415
「平凡」「草迷宮」
M41.0414
小樽着。
京子が自由に歩き廻り、廻らぬ舌で物を云ふ。
野口雨情他と語る。
M41.0413
函館発。
M41.0412
日曜。吉野君と話。
M41.0411
郁兄と大森浜を歩む。
M41.0410
M41.0409
東京行きの話まとまる。断片的生活のこと。
M41.0408
夜、吉野君が当直なので、東川小学校の宿直室で四人で飲む。
M41.0407
午後九時二十分函館着。
岩崎君宅に泊まる。
M41.0406
午後二時十分宮古港に入る。すぐ上陸して入浴、梅の蕾を見て驚く。街は古風な、沈んだ、黴の生えた様な空気に充ちて、料理屋と遊女屋が軒を並べて居る。
夜九時抜錨。
M41.0405
七時半抜錨。
夜、当直室で老船長や機関長と話。
M41.0404
今日は潮がなくて炭が積めぬという。無聊。
M41.0403
神武天皇祭。乗船する。
石炭を積まぬから明日の出帆とのこと。舟でうつらうつらといちや 。
M41.0402
出帆広告を見て函館行きを決意。
方々から金を借りる。
夜に出帆予定が、明日の十時に延びる。旅館の一夜。
M41.0401
目的のない生活!
小泉君が早朝一番の汽車で誰にも知らせず帰京。
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