啄木日記メモ目次
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時間表目次
M41.0630
吉井君来訪。恋の話。
中門前町から電車。すきあるきではなくて、すき乗り。
雨が晴れて静かな晦日の晩。
M41.0629
目をさますと、凄まじい雨、うつらうつらと枕の上で考えて、死にたくなった。
筑紫なる菅原よし子に手紙。
死という事が執念く頭に絡んで来る。
与謝野氏から送金の知らせ。
M41.0628
千駄ヶ谷へ。過日の歌の話。
文芸の二方面という事を考えた。現実の苦痛と、全く現実と離れた事と。
予は両方に各々の理を認める。そして予自身も両様の心地を持っている。然し与謝野氏は予の歌を半分しか解らない。
M41.0627
長谷川氏から今月はどうしても原稿料出せぬという手紙。
噫、死のうか、田舎にかくれようか、はたまたモット苦闘をつづけようか?
誰か知らぬまに殺してくれぬであろうか!寝てる間に!
M41.0626
せつ子から手紙。妹−みつ子、噫!
吉井君、平野君と恋談義。
M41.0625
菅原よし子から絵葉書。
夕方に百合の花。
金田一君と夜に散歩。電柱の下に美人。
頭がすっかり歌になっている。
M41.0624
昨夜枕についてから歌を作り初めたが、興が刻一刻に熾んになって来て、遂々徹夜。与謝野氏に送った。
(夕飯後)貞子さんが来た。来て先ず泣いた。明日伊豆の伊東へ行くとか行かぬとか云う。父な人の家は破産しそうだと云う。
国木田独歩氏、わがなつかしき病文人が遂に茅ヶ崎で肺に斃れた(昨夜六時)と聞いた。
吉野君から手紙。ああ、酒と女!君の書く事は真実だ。
M41.0623
小雨を犯して紫陽花と白い鉄砲百合を三十銭だけ買って来た。帰りに氷を飲んだ。
暮れてから花瓶を買って来た。其あとに貞子さんが来て行ったという事であった。
M41.0622
金田一君、昨夜の話、手踊人形で大に笑う。
生れて初めて散文詩というものを書いた。
M41.0621
金田一君の恋の話。
千駄ヶ谷で晶子さんから三円。
留守中に貞子さん、机の中には手紙。
小説の一断片は、悲しき結末に急いだのだ!
M41.0620
九時頃貞子さんが来た。かえりに送ってゆかぬかと云ったが、予は行かなかった。窓の下を泣いてゆく声をきいた。
貞子さんに最後の手紙を書いて寝る。
M41.0619
起きたのが八時、巻煙草がない。十二時迄はその事許り考えて、立って室の中を歩いたり、腰かけて窓をあけてみたり許りした。
八時頃、(吉井君と)二人で出かけて大学の前の夜店を見て歩く。手踊人形というものを二人で買った。その時、僕ら二人と外に二人の女が立っていた。一人は美しい人であった。僕らは、これをしもすき歩きと云うのだと云いながら、其あとをつけてあるいた。人込の中に隠れつ現れつする白地の単衣の人!
M41.0618
貞子さんが風の如く来て風の如く去った。燕なら可いのに・・・。
無聊な一日。
M41.0617
昨日の新聞にあった、一昨暁剃刀で自殺した川上眉山氏の事。
貞子さん来る。
金田一君に姉の事を語る。
M41.0616
せつ子から葉書。宮崎君が健康を害して枕についたと云う。悲しくなった。
何もしたくない日。
M41.0615
平野君から借りたゴルキイの”Three of them”
金を欲しい日であった。
M41.0614
金が少しでもあると、気が落付かなくていけない。今日は三度も四度も外出した。
M41.0613
原稿紙と百合の花と足袋と櫛と香油と郵便切手と買って来た。
来客多し。夕方貞子さん。
M41.0612
春陽堂へ。原稿料相談。
貞子さん来る。
長谷川天渓氏に”二筋の血””天鵞絨”。
金田一君また五円貸す。
M41.0611
吉井君来る。金矢君、板垣君、上京以来初めて真の郷里言葉で話した。
女中が先月の下宿料の催促。
森先生を訪ねた。まり子さんが、ピヤノを習ってるという。
金田一君が其衣服を典じて十二金をあつらえて拵えて来て貸してくれた!
”二筋の血”脱稿。
M41.0610
”二筋の血”
M41.0609
”病院の窓”春陽堂で買い取る事に決まった。
七時頃鴎外先生を訪うたが不在。予と相並んで三四町の間歩いた女があった。
阿部月城君泊まる。
M41.0608
紫と淡紅色の千鳥草を買って来て瓶にさした。
遠雷の音。雹が降り出した。向こうの家の瓦屋根に当たって反かえる様のおもしろさ。雹を見ながら、金田一君と語った。
M41.0607
動坂に平野君を訪う。露西亜小説を二冊借りる。
二時から金田一君と上野の太平洋画会。吉田博の月夜のスフィンクス。
帰りに吉井君と会う。
M41.0606
貞子さん来る。
音楽通解を売って電車賃に。千駄ヶ谷へ。
”罪と罰”、妻の一張羅の衣服を典ずると、旅費と、家族が二三ヶ月間生活するだけの金が出来たと云う。それが貧乏ならいくら貧乏しても可いと笑った。
M41.0605
書こうにも紙がない。無聊の圧迫程恐ろしいものはない。
M41.0604
お昼ですと云って女中に起された。
”天鵞絨”脱稿。
鴎外先生の留守宅に置いて来る。
M41.0603
貞子さん来る。金田一君と語る。
”病院の窓””母”帰る。
”天鵞絨”
M41.0602
顔を洗う時、青梅の実。
並木君来訪、予にストアイキの小説を書けと云った。
”天鵞絨”。
M41.0601
せつ子から手紙、京子はモウ殆ど全快。
”天鵞絨”書きつぐ。
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