かえるさんレイクサイド (18)



年の半分が無事に過ぎた。かえるさんは、かえる天神の夏祭り恒例の「かえる股コンテスト」を見に行くことにした。近所から股に覚えのあるかえるが集い、おのおのの股を踏ん張って、その形を競うのだ。


えるさんが着くと、ちょうど本殿のしぶい蟇股(かえるまた)の前で巫女さんが舞っているところだった。舞いがゆっくりになったところで、とつぜん年寄りがおひねりを放った。それがきっかけで、みんな一斉におひねりを投げ出した。かえるさんもあわてて手に持っていたおひねりを投げたが、コントロールが狂って本殿の床下に入ってしまった。巫女さんは慣れた様子で床下にすばやく手を突っ込んでおひねりを拾った。


女さんがおひねりを拾い終わったのを合図に、みな境内のあちこちに散らばって、股を踏ん張り始めた。コンテストは、ただ股の形だけを競うのではない。股の間から見える景色がだいじなのだ。場慣れしたかえるたちは、さっそくハスの咲いている池のそばに陣取ってうんと股を広げた。見物人から、おお、と声が挙がった。かえる番長が、片膝を曲げて大見得を切ったのだ。番長はカセットデッキのスイッチを入れた。ラジオ体操が流れ出した。それに合わせてゆっくりと体の重心を、右に左に移していく。ハスが揺れているように見える。


っちょまえに歌舞きよって。近頃の若いのはああいうのが新しい思うとるんかい」声に振り向くと、見覚えのあるかえるが将棋を指していた。かえる股には一家言あるらしい。「見たくればっかりや。ずばっとこう、ストレートなやつが最近は少なくなった」そう言いながら、香車をぴしりと打った。


然、将棋指しはかえるさんの足下を指さした。「お、ええ股しとる」周囲のかえるが、いっせいにかえるさんの股を見た。「何にもあれへん」「田んぼと空だけや」「前衛か」「違うて、鎌倉様式のかえる股や」「ずばっと直球や」かえるさんは自分の股をのぞきこんだ。「自分の股のぞいとる」「違うて、ああやって頭の形を見せとんのや」「股変化か」「やられたわ」


棋指しは手を止めて競技会のテントに行き、なにやら相談をしてからマイクを握った。「はい、今年の一等賞が決まりました、みなさんご注目」それから大きな画板のようなものを持ってやってきた。「こちらです。お名前は」「かえるさんです」「はい、おめでとうさん、音楽かけてや」かえるファンファーレが流れて、将棋指しはかえるさんに大きな板を渡した。かえる股記念ジグソーパズルだった。ひときわ大きな拍手が響いた。番長が潔く手を叩いていた。





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