カメラ・オブスキュラ@スミス記念堂

カメラ・オブスキュラとは

 カメラ・オブスキュラは、「暗い部屋」という意味。
 部屋の壁のひとつに穴をうがち、そこからもれてくる光によって部屋全体に外界を映し出す。これがもともとのカメラ・オブスキュラです。古い蔵の中に、節穴から通ってくる光で外の景色が映し出されることがありますが、これも一種のカメラ・オブスキュラ現象です。
 かつては暗箱を使った小型のカメラ・オブスキュラを用いて、絵が描かれたこともありました。
 のちには、穴のかわりにレンズを用いたカメラ・オブスキュラも登場しました。19世紀には、レンズを通って来た光を潜望鏡のように反射させて水平面に映し出すカメラ・オブスキュラが流行し、世界の各所にできました。

 スミス記念堂のカメラ・オブスキュラは、レンズを使わず、壁穴から外の景色を堂内に映し出します。このため、像は暗いですが、レンズを使ったものとは異なり、堂内全体がスクリーンとなります。

なぜ、ただの穴を開けただけで景色が映るのか?

obscura_ex.jpg わたしたちが眺めている景色の中にあるどのモノも、光をあちこちに反射させています。けれども、景色の手前に小さな穴を開けてやると、モノから反射してくる光の限られたものだけが穴を通過できます。穴を通過した光は、限られた角度の限られた場所に届きます。
 たとえば、彦根城の屋根のある一点から来た光は、穴を通って、お堂の床のある一点に落ちます。いっぽう、お堀のある一点からやってきた光は、穴を通って、お堂の天井のある一点に到達します。こうして、外の景色のそれぞれの点からやってきた光は、小さな穴を通ると、それぞれ異なる点に到達します。
 お堂の壁を白くしておけば、こうして届いた光を映し出し、外の景色をまるごとお堂の中で眺めることができる理屈になります。
 小さな穴を通って届いた光はとても弱いので、部屋をできるだけ暗くしておく必要があります。また、眺めるときは暗闇に目をならす必要があります。
 穴のかわりにレンズを使った場合は、スクリーンはレンズから決まった距離に置く必要があります。このとき、できる像の大きさは、レンズの焦点距離によって異なってきます。また、像の範囲はレンズで集められた部分に限られます。


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