旅をまかせるならこんな駅員さん。たとえ神様に悪意があっても駅員さんには悪意はない。たとえ旗の先がとんでもない場所でも、駅員さんが指すのならだいじょうぶ。

 駅員さんの表紙をめくると中は日記、そして糊付けされた絵葉書たち。日記が綴られ、葉書は落ち葉のようにはがれ、どこかにたどりつく。全部出し終わったとき、日記は冬の裸木のように軽くなっているに違いない。
 持ち主はおそろく天の橋立に行ったのだろう。けれど、日記も書かなかったし葉書も出さなかった。書かなかった旅。書かなかった、という記録。旅は何度も開かれて、差し込みの折り目がくたびれている。


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