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19990801



▼関西空港からアムステルダムへ。飛行機で隣りに乗り合わせたのは太田蓉子さんという服飾史の先生だった。明治・大正期の日本の制服の話をあれこれ伺う。帽子の謎、エプロンはファッション、などなど。こちらはエレベーターガールの制服の話。
▼Schipoll空港からDen Haagに向かう列車の二階から見渡すと、オランダは真っ平らだ。尖塔のありかが町のありかで、そこから牛、馬、羊、そして造成地。短くぞんざいな緩衝地帯。町。そこからまた、牛、馬、羊。Den Haag市内で線路は分岐する。三角地帯を埋めるミニチュアのような家々と畑、庭のパラソルで憩う人たち。今日は日曜だ。そして造成地を過ぎてDen Haag HS駅。
▼HS駅前に宿。もう5時近いから博物館には間に合わない。あちこち散歩。イスラム系、中国系の店が目立つ。日曜でバカンスで店が閉まっている人気のない町並み。ファサードがそろっている分よそよそしく、なんだか生気のないインドネシアに見える。aakなんて綴りの惹き文句を見ると、いよいよインドネシアかと思う。夕立が来て、歩行者が建物に寄り、家の中から雨を確かめる人がでてくる。店主が玄関で子供を両手で差しだし、どしゃぶりの中に突きだして遊ぶ。それを見てようやく人心地がつく。▼トラムの駅でインドネシア語。トラムの切符ってどこで渡すんだ。結局どこでも渡さずに無賃下車すると、男たちがうろうろするネオン町。ウィンドウの中の椅子には誰もいない。飾り窓?
▼7時を過ぎてまだ断然明るい。復活したゆうこさんともう一度散歩。長い黄昏。何時間もかけてゆっくりと空が暮れていく。こんなに北に来たのは初めて。小路から通りに出ると、広々と町にかぶさる色。そこからまた小路。屋根の輪郭で切り取られる空。▼パサージュ。天井が空の色を丸くなめして、黄昏をさらに黄昏れさせている。家。家のような通り。▼パサージュを抜けて、小路はまだ暮れ続く。この長い黄昏の時間を覚えておこう。この長い時間の中で起こる微妙な色の変化と、オランダで描かれるできごとについて考えること。▼運河のそばの船でビールとジン。隣りの夫婦が「やーーやあやあやあやあ」「ねーいねいねいねいねい」。これでJaとNeeの発音は覚えた。11時を過ぎる頃、ようやくあたりは暗くなった。

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Beach diary