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19990808




 デン・ハーグからデルフトへ自転車を飛ばす。フェルメールの「デルフトの眺望」を見たらやたらと行きたくなってしまったから。というか単純に郊外に出て牛やら馬やらを見たかったのだ。

 閑静な住宅街やら派手な形の給水塔を眺めつつデルフトへ。地図らしい地図をもっていないので標識が頼りだ。前方にでかい尖塔が見えたので、そこを目指して自転車を止めて一服。じつは、その尖塔がフェルメールの埋葬された旧教会だった。ちなみにフェルメールと同じくここに埋葬されている有名人にレーウェンフックがいる。光学的組み合わせ。
 もう一つのでかい尖塔を目指す。それが新教会。そばの観光案内所で地図を入手。フェルメールはさすが郷土の作家だけあって、ゆかりの場所があれこれ載っている。彼が住んでいたという家の跡へ行ってみると、新教会前広場のすぐそばだ。扉を開けて見上げると、教会がばーんと聳えている、そんな場所だ。この教会でフェルメールは洗礼を受けた。「デルフトの眺望」では 新教会とフェルメールの生家のあたりに薄く陽光が射している。その光を描くとき、逆に教会の下から陽光を見上げるような感覚が、フェルメールには容易に立ち上がったはずだ。
 歴史博物館内の広場で室内楽のマチネーをやってるらしいので聞いていく。ロシア音楽特集で、チャイコフスキーのロマンスにクラリネットソナタ、ストラヴィンスキーのピアノ小品、最後はリムスキー=コルサコフの金管五重奏。ストラヴィンスキーのラグが、乾いたユーモアのある演奏で気に入った。
 タイル博物館。敷き詰める博物学。中国の青磁と、東インド会社の収集力との出会い。
 南の運河を渡ると、そこからデルフトの街が見渡せる。フェルメールが「デルフトの眺望」を描いた場所だ。描かれている視点からすると、フェルメールは地面ではなく建物の二階から描いたのではないか、という説もある。それに、彼の時代には、実際の創作はアトリエで為されたとされる。でも、少なくとも、どこを描くかを選ぶ段階で、彼はこのあたりに立ってみただろう。
 絵の印象では、一本の運河をはさんで彼が街と向かい合っているのかと思っていたけど、じっさいには、この地点で運河は分岐して、右手にはその分岐が広々と流れている。意外な感じがした。そういえば絵と向かい合うとき、自分の右と左に異質な世界を感じたことがあまりない。
 この、絵には描かれていない運河の存在を覚えておこう。

 帰りには家庭菜園裏の牧草地で自転車を止めてなごむ。ちょうど数十m先に小道が横切っていて、じっと見つめていると、その小道の向こうが、書き割りに見えてくる。絵に描いた牛が牧草を食んでいる。

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Beach diary