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20020926







 なんとか起きようとしたが、結局昼過ぎまで外に出る気にならなかった。

 生汗が出るので昼にもう一度寝て、夕方起き出すが、やはり本調子でない。旅疲れに加えて、酒疲れなのだろう。散歩中に酒を飲むのは一日一軒にしたものの、そもそもあまり量を飲むほうではないのに昼飯と夕飯には酒を頼んでいる。どう考えても日本にいるときの倍以上飲んでいる。

 石畳を歩きながらめまいがしてくる。継ぎ目がいくつにも見えてくる。てんてんと遠くからノミで石を打つ音がする。リスボンの石畳はひとつひとつ形の違う小さな石の集まりでできている。この前、アルファルマの坂を歩いていたら、日盛りの中で半身裸の男が地面にはいつくばって、傍らにある石の山からひとつとっては、形を整えて置いていた。
 てんてんと音がする場所では、たぶんあんな風に男がはいつくばっているのだ。

 道ばたでアフリカ系の男が鞄から動くおもちゃを出して路上に置いている。走るネズミをGIが匍匐前進しながら狙い、その傍らでウェディングドレスを着たリカちゃん似の人形がマイクを持って狂ったように歌っている。もう一歩でヴェネチア・ヴィエンナーレに行ける組み合わせだ。次は何をどこに置くのか。そういえば、甘いものを食ってなかったなと思い、Pastelaria に入る。ウィンドウに、焼却炉で焼け残ったような、形のくずれたリンゴがいくつも並べてあるのでそれを頼む。

 うまい。

 体全体がこの甘みにすがりついているのがわかる。おそらくは、芯を抜いたリンゴをオーブンレンジで焼き、シナモンと砂糖をかけただけのものだ。焼けた皮と尻からくずおれたような形がそれを物語っている。しかしこの簡単な菓子に、この体はなんと簡単にやられてしまうのだろう。
 帰るまでは散歩中のBarはやめて、Pastelariaにしよう。

 それからしばらく歩くが、やはり少し頭がぼんやりしている。BarでCrem de Marisco。こう書くとどういうものか知って頼んでいるみたいだが、単にスープの項目にあったからあてずっぽうに試しているだけのことだ。出てきたのは魚とアサリ味のする濃厚なクリームスープで、そこにちぎったパンが浮かべてあった。いまの自分にはこれでじゅうぶん一食分になる。酒はなし。1 Euro。

 さらに別の店に行って、オレンジを搾った生ジュースを飲む。


 散歩食事療法が効いたのか、少し気分がよくなった。帰って読書。

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