The Beach : June a 2003



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20030615

 曇り空。ひと雨来そうだが、夕方に湖岸へ。2時間ほどロングトーンを吹く。メトロノームも楽譜もなし。遠くから波がやってくるので、波頭が現われてから波打ち際でくだけるまでをひと吹きと決める。
 ひさしぶりでアンブシェアが定まらない。タンギングをして初動をかけてやれば、唇はぶるぶるとふるえだし、どうにか音にはなるのだが、タンギングなしだとすーすーと息ばかりがもれてなかなかバズィングにならない。音になるかならぬかの領域を広げたくて始めたロングトーン練習なので、タンギングは基本的に禁止にする。息をピアニシモで吹き入れて、バズィングになるぎりぎりのところを探る。それができたら、バズィングが成立しないぎりぎりのあたりまで唇をゆるめたり息をゆるめたりする。
 野球のボールが打ち上げられていたので沖に投げる。ロングトーンを続けるうちにそのことをすっかり忘れていたのだが、ふと足下をみると同じボールがあって驚いた。波が返してきたらしい。

 実際にやってみるまでは予想もしなかったのだが、トロンボーンのベルに映る湖岸はとても美しい。つるつるに磨き上げられたベルには、凹みのおかげで空いちめんが映り込んで、360度のできごとがすぐ目の前に収まっている。トンビがベルの中でゆっくりと輪を描いていき、スライドを波頭がのぼってくる。


20030614

 GScriptの感想をメールでいただく。あれこれ示唆もいただき、張り切らざるを得ない。

 赤松さん、川村さんの結婚式。早く着いたので近くのロッテリアで腹ごしらえをしてたらすぐ向こうの席に三輪さんがいて、必死で立会人のことばを編集してるのでおかしかった。式のあと、中庭で佐近田さんのギター+フォルマント歌唱。

 帰ってから、またプログラム。やはり波形を見ながらでないと、会話おこしは苦しいなと思っていたところに、QuickTime 音声をOS Xで扱うことのできるSound StudioがAppleScript対応であることを知り、少し光明が。AppleScriptは、基本的に他人の作ったソフトを組み合わせるものなので、こうやって誰かが作ったソフトを利用させていただいて前に進む。惜しむらくは組み合わせる相手がフリーウェアではないのだが。
AppleScriptのリンク集を作っておく。

 今日は雨なのでトロンボーンの練習はまた明日。トロンボーンのことをちょっと復習。人の声にもっとも近い楽器、という何気ないひとことに、人の声のようなバラエティ、というアイディアを思いつく。

 西春のご主人からまた出物のお知らせ。もう八十になられるご主人が、正座して手が届く高さにある押入から引き出しては紙を触って探り当てた、その結果を携帯で伺う不思議。こちらの注文も、ご主人の探索も、けして針穴を開けるような正確なやりとりではない。だからこそ、かえって思わぬものが出る。
 ものすごく久しぶりに森さんから連絡。このところ夜が足りない、と思っていたところへ夜のメール。


20030613

 午後の健康診断を終えると梅雨の晴れ間。自転車を走らせ、電車に飛び乗る。東西線の地下鉄駅から三条川端に上がると、雨上がりの夕方、雲の向こう側から洩れる光であたりはSFのような景色になっている。

 西春で、おとつい買うと決めていたもう一枚の絵を手に入れる。豊春の浮絵なのだが、上が欠けているので少し安い。神戸市立博物館の所蔵している絵によく似ているが、細かい奥行き描写が異なっており、どうもこちらが旧版で、あちらが新版ではないかと思われる。遮蔽のテクニックを比較するとおもしろいかもしれない。
 西春のご主人が、領収書の収入印紙を貼るときの指の押し方が、いかにも紙の感触を確かめるような力のこめ方で、ああ、何年も紙を触ってこられた人の手つきだなと思う。

 これで今週はもう存分に絵を買った、と思いながら、つい大書堂に寄ってふらふらと二階にあがると、なんと浅草の三枚綴りがでんと飾ってあるではないか。しかも構図が奇妙で、ひょうたん池のこちら側に十二階が移動して、仲見世の傍らに顔を見せている。となれば買わざるを得ない。

 すっかり散財して軽い財布で穴沢楽器へ。BachやHoltonのトロンボーンが麗々しくウィンドウに飾られているが、気圧されるような値段がついている。もう少し安いのはないかたずねてみると、ひとつ前の型のヤマハの新品があるというので出してもらう。吹くのは20年ぶりくらい。息を吹き入れてみると、しゅぽ、しゅぽと情けない音がして、それから少しずつ上へ、ハイトーンのBbまで鳴った。ぼくはバストロンボーンだったので、滅多にこんなハイトーンは鳴らさなかったし鳴りもしなかったので、不思議な気がした。もうこの楽器に決める。

 昔にくらべるとずいぶんトロンボーン用の譜面集が出ている。何か買っていこうかと思ったが、いやいや、このトロンボーンはロングトーンを鳴らすためのものだと思い、結局本体だけを買って帰る。

 この楽器が意外に重いことを忘れていた。浮世絵とトロンボーンを抱えて背中にはコンピューター。どの方向に転んでも全部はかばいきれない。人混みの中を緊張して歩く。
 途中、腕が疲れて、六曜社で休憩してrelax。注文をしたら、上の階からウェイトレスの子が二人もやってきたので驚いた。一人は新入りなのだろうか。

 南彦根駅からは自転車。トロンボーンケースをさげて片手運転。カーブでよろけるこの感触、久しぶりだな。


20030612

 梅雨バテか。朝から講義でへとへとQ。ようやく木曜日が終わった。ぐったり。例によって頭がじんじんして夜はろくに何もできず。夜中に、近くにできたラーメン屋でラーメン並を食っていると、aikoの曲が流れてくる。こういう声を出せるヒトがこんな風に声が落ち着けていく曲は、いまのJ−POPでは意外に珍しいと思う。そして、こんな転調をしないと、そういう落ち着け方に着陸できないJ−POPの雰囲気は息苦しいとも思う。

 朝の連続テレビ小説を見てそそくさと自転車を飛ばすと仕事場の一コマめ、という環境に住んでいるので、連続テレビ小説を楽しみにできる年は幸いである。今年前半期の「こころ」は、浅草と新潟が舞台ということもあって、かなり楽しみにしていたが、すっかりついていけなくなってしまった。

 わたしの「こころ」が瓦解し始めたのは、4月、主人公こころが朝倉さんの新設診療所のペンキ塗りをしていて、ペンキの足りないことに気づいて買い足しに出かけたときのことだった。そのこころに、二人の友人が、朝倉さんの秘密を打ち明ける。
 わたしは、その次には当然、「ペンキを買い足しにでかけたというエピソードの後始末」が来るのだろうと思っていた。たとえばペンキを買うのを忘れて戻ってしまい、みなにいぶかしがられる。あるいは真っ赤なペンキを買ってきて塗り始めたのに自分でも気づかず、みなの驚きの声にようやく我に返る。とにかく、「ペンキを買う」というできごとを使ったなんらかの展開があるはずだと思った。

 しかし、そんなものはまるでなく、主人公はただ、その夜、朝倉さんのマンションを訪れ、事の真相を確かめるのみだった。ペンキの落とし前はどこにもつかない。

 前々から、浅草の料亭の内部事情やスチュワーデスや医師の生活の描き方がずいぶん雑だとは思っていたが、これを見て、もしかしてこのドラマの脚本と演出はかなり粗雑なのではないかと予感した。結果、その後の展開は予想以上に見続けるのが辛いものとなった。いきなり結婚したり、かと思ったらダンナが雪山で死んだり、かと思ったらいきなりダンナの元妻が出てきたり、必殺技をどんどん使いながら、セリフやエピソードのひとつひとつがまるで次につながっていかず、手当たり次第に紋切り型を乱発しては消費しているだけに見える。ダンナが浅草に作った診療所はどうするのだ。確か家族でネコのウー吉というのを飼う話もあったのだが、これまたよそに預けてそれっきり。生き物とエピソードは粗末にしてはいけない。
 いまは料亭の板前が辞める話をしていて、ようやくこれまで希薄だった店の話へと移っている。ここから代々続いているというこの浅草の料亭についてもうひと掘り下げあるのかどうか。三社祭や花火大会だけが浅草ではないのだ。



20030611

 講義を終えて夕方に京都へ。まずはトロンボーンを買うべく穴沢楽器に20数年ぶりに行ってみるが定休日。拍子抜けして、寺町をぶらぶら歩いて西春へ。ご主人はだいぶ足が弱られたとのことだったが、それでも「尻を直接畳に乗せるより正座のほうがらくですねん」と、かくしゃくとしておられる。浮世絵の話につけ、よもやまばなしにつけ、ここのご主人と話している時間はほんとうに楽しい。最近彦根に旅をされたそうで、そのときの話をひとしきり伺ってから、このところ探している、ちょっと面倒な条件のものを言うと、とたんにそれなら・・・とまさに目当てのものが目の前に広げられる。その引き出され方のあまりの見事さについ一枚買ってしまう。あ、トロンボーンを買うはずの金が。

 誓願寺へ。ボロット・バイルシェフの声を聴くのは1年半ぶり。ボロットの声と演奏はボリュームコントロールがすばらしく、とくにあのトプショールの音が遠のいていくところは何度聞いてもしびれる。そして、同じリズムで奏でられる唄は、ある長さを過ぎるところで、急に聞く側の感覚が変わって、すーっとまわりの空間が広がって離陸していくような感じになる。

 あえて欲をいえば、また、マイクを通さない生音でききたいなと思った。



20030610

 会議実習会議。GScript ver. 1.0をアップ。ファイルの読み書きのインターフェースにえらく時間がかかったが、まだ道半ばという感じ。なんでこんなもんがいるのか、いぶかしく思う人は「トランスクライバーとは何か」をどうぞ。


20030609

 講義実験実習実習。4回生にはジェスチャー解析用のプログラムを見せながら解説。いまのところなかなか使い勝手は快適。
 実験は面倒なものの、やり始めるとやはり楽しい。おもしろい結果が出るたびに「いまのアレたまらんなあ」などと叫ぶ。
 実習はショッピングの科学の実践。
 夜、万里子ちゃん、ゆうこさんと屋台へ。そのあともプログラミング。


20030608

 何年かぶりでプログラミングハイがやってきたらしい。こうなると、睡眠時間を削ってもがんがんプログラミングを書き、バグ出しをする(このバグ出しの時間のほうが長いのだが)。明け方、とりあえず完成といっていいところまで行くがアップロードを前に布団に沈没。


20030607

 土曜日だが環琵琶湖文化論実習の課外実習。10時半、彦根駅を振り出しに、大洞弁財天、龍潭寺、バス移動して彦根港から竹生島へ。いわば内湖の弁財天から湖の弁財天へという趣向。
 竹生島では、みやげ物屋の上島竜平似のご主人と楽しく話している間に残り20分となり、駆け足で見回るハメに。かわらけ投げで「愛宕山」気分と行きたかったがまた次回。
 彦根港に戻ってから金亀児童公園を経て商店街歩き。夢京橋キャッスルロード,市場街、銀座街、花しょうぶ通りの勝負市。登リ町、京町、佐和町の商店街を抜けて彦根駅に戻ったころには6時。

 帰って飯を食ったら突然眠たくなり9時には就寝。


20030606

 金曜は講義なし。喫茶店と大学をハシゴしてプログラミングにいそしむ。水曜日に思いついたアイディアを形にするため。

 夜、ゼミの新入生歓迎会。二次会のカラオケで、藤井くんをターゲットにさまざまな愛を歌ったが、あまり報われなかった。夜中近くに帰宅。


20030605

 まっとうに働く。


20030604

 まっとうに働く。夕方、会話・ジェスチャー研究会で、開発中のジェスチャー解析ツール「GScript」を使って、プロジェクタでムービーを見ながらディスカッションをする。現在の状態でかなり使えることがわかったが、思いついたことを瞬間パックするには、さらにいくつか機能があるとよいことに気づく。たとえば、指定範囲の前後を手軽にループ再生する機能、狙った場所の前後を自動範囲指定再生する機能など。
 それにしても、ジェスチャーについて思いつきをあれこれメモっていくのは本当に楽しい。この楽しさを形にするためにツールを作っているといってもいい。

 夜、兵庫県から毎回通っている松村さんをまじえて駅前の飲み屋へ。


20030603

 会議会議。夕方、「わたし、琵琶湖の漁師です」の著者、戸田直弘氏の話。外来魚問題に関して明快な説明。

 釣り人とブラックバスやブルーギルの関係は難しい問題だと思う。釣った人間にとって、外来魚はリリースせずに捨てて下さいと言われても、ぽいとゴミ箱に捨てたりそのへんに放るのは抵抗のあるところだろう。戸田さんはキャッチ&イートに関して、古来から湖魚を食べる文化を維持する意味ではあまり肯定できないということを言われていたが、湖魚の構成バランスを取り戻すまでの次善の策としてはアリかなと思った。


20030602

 月曜。ゼミ講義実験実習実習。


20030601

 昼前、フランク、青山さん、田尻さん、ゆうこさんと浅草へ。まずは日本ダービーでごったがえしているJRAの馬券場へ。飯田屋でどじょうを食い、しばしなごんだ後、木馬亭で浪曲。富士琴路「相寄るこころ」は、北海道を舞台に、酒浸りだった樽職人が酒の勢いで女房子供を売り飛ばしてしまい、改心ののち18年後に町長となり再会するという話。国本武春の登場には「たっぷり!」の声が。演目は「原敬の友情」。腹の痛みをうったえる原敬のかすれ声が魅力。トリは東家三楽で、マクラに船村徹、三波春夫、村田英雄、二葉百合子といった浪曲出身歌手の話がチラと出てから、本題は「情けの関守」。加賀騒動のおり、逃亡中の石川某を事情を知って切腹覚悟で見逃す関守の話。声の大きいところもさることながら、終盤、石川と彼を追うゴロツキとの低い声でのやりとり、ドスがきいてものすごい。

 その後、宮田レコードでビニル盤あさり。フランクは日本語が読めないのでジャケ買いをしているのだが、引き当てるのが「クリちゃんレコード」シリーズの乗り物ソング集とか、三波春夫の五輪音頭とか、妙に目がいい。さっき三波春夫の話がマクラで出てたことを知るはずもないのだが。NHKアーカイブで見た「夢で逢いましょう」がお気に入りらしく、坂本九のけっこう値の張るシングルも買っていた。部屋を借りている中野の邸宅もいいところだし、カンのいいヤツだ。

 最後は金寿司で今回の彦根案内はシメ。まだまだ食べたいところだったが、最終の米原停車の新幹線で彦根へ。


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