The Beach : June b 2003


<<前 | 親指記( + 16h) | 月別 | 次>>

20030630

 ゼミに実習実験。学生に「いやあ、この前講義寝過ごしちゃって」というと、「先生、去年も一回ありましたよね」と言われて驚く。日記をくっていくと、確かに7月に一度寝過ごしている。この二年で二回。ゆゆしき問題だ。どう考えても前期の講義はあまりにつまり過ぎている。今年はよんどころない事情で非常勤も引き受けたので、よけいに辛い。来年はなんとか減らさねば。でないとまた寝過ごしてしまう。寝過ごしたことを忘れてしまう。
 帰ってビールを一本飲んだだけで布団に沈没。


20030629

 昼まで寝たいところだが、なんとか起き出して原稿にいそしむ。夕方、西春で錦絵二枚。森さんとうどん。終電で帰宅。


20030628

 青山さん、田尻さん、ゆうこさんと近江八幡で待ち合わせ。
 広々とした大中から堀切港に入ると、急に山に囲まれた別空間になる。ここから通勤船に乗って沖ノ島へ。

 現在の船着き場は埋め立て地として戦後にできたそうだ。それまでは各家の裏から直接船が出ていたという。家々の軒は狭く迫っている。傘がようやく広げられるほど。路地のある島。その路地をぬけて、裏庭からは琵琶湖。
 その一軒にあがらせていただき、席に案内されると、ずらりと並んだ湖魚の料理。ハスずし、ハスの酢の物、ゴリ、モロコ、コイ、ウナギ、テナガエビ、鯉の煮付けだけで3人分くらいありそうだった。
 厨房でコイをさばくところを拝見し、各自柳包丁を引く。それが洗いになって出てくる。さらにはビワマスの刺身(これが脂がのっていて実にうまい)。天然うなぎでダシをとったという贅沢きわまりない「うなぎそうめん」。ふなずしはこれまで食べた中でベストだった。米の部分がうまい。
 たらふく食って畳の上に寝っ転がる。しばし全員動けず。



20030627

 ようやく金曜日。原稿。
 アン・サリー「Day Dream」。「わたしだけのための選曲やー」と誰もが?思う絶妙なラインナップ。「三時の子守歌」は思ってもいない方向から突如理想的なカバーが現われた感じ。
 スティーリー・ダンの「everything must go」。「Sneaking up on the new centuury」の果て。ウォルター・ベッカーがボーカルをとるあたりから確実な速さでやさぐれていく。



20030626

 なんと朝、寝過ごしてしまう。水曜と木曜が夢の中でごっちゃになっていたのだ。非常勤先に謝りの電話をかける。

 夜、なんということもなくTVをつけたら、「トップランナー」をやっていて、そこに出ていたアン・サリーという人をまるで知らなかったのだが、歌が始まるとそれはなんと佐藤奈々子の「週末のドライブ」で、それだけでも驚いたが、繰り出される声がじつにていねいにコントロールされていてほとんど吸い込まれるように聞いた。その次に歌ったのが「Disney Girl」という、古き良きアメリカを回顧するホワイトシュガーのような歌で、ニューオーリンズでそんな歌を異邦人が歌っているというのはある種あやういことなのだが、それを気負うことなく的確な距離をとりながら声にするこの人はただ者ではないと思う。自分の声から踏み出すことを目指すのではなく、自分の声の範囲でできることに耳をすませながらたどりつくことのできる歌い方。歌が人を動かし自分はそのメディアであってそれ以上でも以下でもないという、なにか諦念のようなものも感じる。いま30才ということだが、よい意味で30らしい歌い方だなと思う。

 コンフェデ杯を二試合見て寝る。



20030625

 さらに。GScript ver. 1.31。 GScriptLite ver. 1.1。



20030624

 まっとうに働く。



20030623

 実験に追われる。準備はたいへんだが、いったん始まると観察実験はじつに楽しい。
 GScript ver. 1.3。Excelを使わないテキストエディタバージョンとして GScriptLite ver. 1.0


20030622

 森さんに携帯で打ち込んだメールが貯まってきたので、「親指記」と名づけて日記にする。携帯から送信したらすぐに更新されるようにCGIを書いた。以前やっていた「田中くんのための携帯日記」は、携帯で読むためのものではあったが、じっさいにはパソコンから打っていた。今度はじっさいに自分の携帯から打っているので、親指のたどたどしさが文字列に反映されているように思う。
 ほとんどのものは40文字で打ち込んであるので、一行10文字の携帯の画面で見ると、ちょうど四角い領域に文字列がおさまる。

 神戸市立博物館へ。初三郎のU字型地図は、貞秀描く弓なりの日本列島によって先取られている。内海を囲んでいた陸地が大陸から分かたれて島々となった。その島の一角から、かつて内海だった海を抱きかかえるようにまなざし、対岸につながろうとする。
 地図屏風とパノラマ。屏風がもたらす遮蔽の変化。「曲」という装置。離れた曲が重なる。直角になった曲と曲に囲まれる。曲の縁に隠れようとする曲に別れを惜しむ。屏風の前を過ぎる運動は、曲を見えなくし、見えない曲を推し量らせる。曲が隠れることで、離れた地点に瞬時にたどりつき、曲が現われることで新たな領域が挿入される。

 夜が明け始めるころから始まったコンフェデ杯、日本vsコロンビア。うーん、今日はあかんかった。中村がいないだけで、全然生彩を欠く攻撃。へとへとの高原が使われ続けるのは素人目にもつらいものがある。結局アレックスの足技で突破するしか。途中交代もなんだか思いつきのような感じ。瞬間最大風速がでかくても、アヴェレージがとれないとトーナメント方式で勝つのは難しい。


20030621

 The Third Gallery Aya で池田朗子展。車窓にくっつけた飛行機の向こうを風景が走っていくという、いたってシンプルな映像なのだが、これがなんとも楽しい。模様もなにもほどこされていない、手でひねりだした小さな粘土のような飛行機が窓に貼りついる、ただそれだけで、風景と窓との間にみるみる空気感が生じる。
 はじめは、飛行機という近景のせいで、車窓の外という遠景が強調されているのかなと思ったが、それだけではなさそうだ。飛行機はただの絵ではなく、立体である。そこに陽があたり、陽がかげり、電信柱の影、橋梁の影が過ぎる。小さな飛行機は、疾走する車の上に落ちる光の明滅と同じ明滅を生きている。その生気が、窓の外に空気感を生じさせている。

 大阪築港レンガ倉庫でヴュー・マスター演奏会。小島剛、千野秀一、Yuko Nexus6 & 田尻万里子。小島さんの演奏では、8チャンネルのマルチスピーカーが使われて、何人かの観客はあちこちをうろうろ。千野さんのときにいたっては、演奏者以外ほぼ全員がゾンビのようにあちこちをうろつき、生きている者と死んでいる者の境目がない、遠近両用世界。サディスティックな音嬲り。Yuko Nexus6 & 田尻万里子はガールズ世界、ドゴール空港の遅回しループで催眠状態に。あ、終わってた。

 空気はたっぷり湿り気を帯びていて、どこかからガラムの匂いがする。と思ったら、千野さんが吸ってるタバコだった。むかし、まだいまのようにガラムが日本で売られていない頃、千野さんは街でガラムの匂いがすると、その見知らぬ人に話しかけてタバコを一本乞うたという。チャーミングな話だ。しばしインドネシアの話。

 43号線から2号線へ。青山さん・田尻さん・ゆうこさんとふうりんらーめんを食って神戸泊まり。青山さんから絵葉書本をもらう。わーい。



20030620

 明け方に寝て昼前に起きる。夕方、湖岸でロングトーン。長い日暮れ。もうすぐ夏至だ。今日は、湖岸を斜めに見て、波頭がはじまってから波打ち際で消えるまでをひと吹きと決める。これだと、うつむかずに、遠くを見た状態でロングトーンができる。波の高さもよくわかる。低いBbとFのあいだに、ぼこぼこと音が裏返りながら倍音が鳴るポイントがある。ホーミーのようだがちょっと違う。唇が細かく振動しながらぼっぼっと破裂しているのかもしれない。
 森さんに親指日記送る。

 夜、プログラミングに励む。GScript ver. 1.2。早稲田の三橋さんから丁寧な使用レポートをいただき、インターフェース改善に役立った。
 夜中にコンフェデ杯、日本vsフランス。日本の攻撃がめくるめくおもしろさ。一瞬でディフェンスをぶっちぎるフランスのゴヴの脚力には決定力の差を感じたが、それでも日本のパス回しのアイディアはすばらしい。中村のフリーキックにはしびれた。遠藤の幻の一発にも。コロンビア戦もまた夜中観戦だな。


20030619

 早起きして、というよりほぼ徹夜でiMovieで1/30秒映像を挿入したムービーを作る。非常勤先でこれを見せて、関連する質問をしてみたが、プライミング効果なし。ちょっと刺激が複雑すぎたか。
 昼に入った喫茶店にたまたま置いてあった「墨攻」を読みふける。
 さらにGScriptの改善。しかし、ぐーっと眠たくなり、また21時頃から布団に。夜半過ぎて起き出し、屋台で少し飲む。


20030618

 ジェスチャー・会話ゼミでGScriptLite(Excelを使わずにテキストエディタを使うバージョン)を試用。しかし途中でハングしてしまい、せっかくディスカッションした内容がパー。とほほほ。
 松嶋さん、成田くんと中華。帰ってからいきなり眠くなり、まだ21時だというのに布団に入る。
 さすがに2時ごろ目が覚め、しばしプログラミング。
 せっかく起きているのでと、さほど期待せずにコンフェデ杯の日本vsニュージーランド戦を見始めると、これが意外なおもしろさ。中村のゴールにも驚いたが、なんといっても中田のゴールで完全に、ずどんと目が覚めた。もうプリントくっきりを主張する柴咲コウぐらいぱっちり目が開いた。生き物のようにぐいぐい変わる攻め。これってワールドカップのときより凄くないか?


20030617

 へとへとQ。

20030616

 へとへとQ。さらにプログラミング。GScript ver. 1.1


to the Beach contents