かえるさんレイクサイド (27)



強い陽射しが暮れかかると、すっかり涼しくなった。「いい股してるとは思ってたけど、裏返るとは思わなかったな」番長とかえるさんは神社の境内に腰をかけていた。「おれたちはどういうインネンがあるんだろうな、イボがあるなんて」番長は自分の股のイボをくりくりさせた。かえるさんも自分のをくりくりさせた。


そうやってイボをいじっていると、そこからけだるいような甘いような湿り気が広がって、夕焼け雲が型押ししたふなずしのように、はっきりと浮き上がるのだった。右にいじると雲の色が深くなり、左にいじると空の色が濃くなった。じわじわ動かすと、雲と空がじわじわ浸みた。


そのうち雲も空も自分もわからなくなり、あたりはすっかり暮れた。「乗ってくか?」番長がバイクの後ろを見たが、かえるさんは目をゆらゆらさせていた。まだイボのあたりがじわじわしている。バイクにまたがると、そのじわじわが散り散りになってしまいそうだった。「まあ今日はゆっくり帰るといいかもな。」そういって、番長は立ち上がるとバイクにまたがった。「気をつけて帰れよ。イボのある奴は早死するっていうからよ。」ヘッドライトが参道をまっすぐに照らした。


かえるさんは、目に焼きついたヘッドライトの残像が、ぼやけたりまとまったりするのを見ていた。それがだんだんまだらになり、すっかり暗くなったところで、ようやく立ち上がると、参道をゆっくり歩き出した。目の前のくらがりがじわじわ動くようで、目を凝らすとそれがまた散らばるようで、股のあたりを気にかけたり気を散らしたりした。遠くで「マイムマイム」の節回しでエグゾーストが響いた。股のあたりがまた湿り気を帯びるような気がした。








第二十八話 | 目次