かえるさんレイクサイド (28)



穴の季節が来た。さっき少し外に顔を出してみたけれど、少しでじゅうぶんだった。少しで顔がつっぱった。明日には、少しはほんの少しになるだろう。ほんの少しも、そのうちなくなるだろう。そのあとはもう、穴にいるだけで、マイナスほんの少しか、マイナス少しか、マイナスとんでもないかがわかるようになる。かえるさんはこたつの中で、とんでもないマイナスのことを考えると、背中が固くなった。


長いこと使っていない横穴は土で半ばふさがっていた。かえるさんは土をかきだして、穴を少しずつ固めていった。もう気の早い他のかえるたちが地下ヘルロードを復旧しはじめている頃だが、かえるさんは穴のかべの、固めたてでひんやりと光るのに、かえるあしを当てた。当てているうちにヘルロードはひとかきもふたかきも復旧しているはずだった。かえるさんは、かえるあしがつめたくなくなったので、引っ込めた。こたつに戻ってあしを温めた。それからまたかべの前にきて、またひんやりした。復旧はみかきもよかきも進んでいるはずだった。


さっき、少し顔をだしたのを思い出した。いまも少しだろうか。かえるさんは穴の入口の真下に戻って見上げてみた。空は真っ暗だった。少し上ってみた。穴の縁に月がかかっていた。そのまましばらく月を見ていた。穴の縁からじわじわと月の残りの部分が現れてきた。じわじわが続くのを見ていた。そのうち丸い月がすっかり現れた。遅いイヌタデの葉が、月をなでた。


かえるさんは、少し頭を引っ込めた。すると、また月が半分ほど穴の縁に隠れた。そのまましばらく月を見ていた。穴の縁からじわじわと月の残りの部分が現れてきた。じわじわが続くのを見ていた。そのうち丸い月がすっかり現れた。きっと復旧は何かきも進んでいた。地下の喫茶かえるはどんなメニューだっただろう。明日は何を食べよう。かえるさんは、丸い月に食べ物を並べてはとりかえてみた。冷たい風が穴の中に押し込んできて、ひゅっと頭をなでた。








第二十九話 | 目次